会社にAIが来たのに、なんで俺だけ使いこなせてないんだ問題
――いつもの喫煙所。カズが一服つけたところに、アキが入ってくる。
はぁ……
でかいため息だな。決算前でもないのに
いや、うちの会社さ、この前『全社員AI使え』ってお達し出たじゃん。俺もChatGPTだのClaudeだの開いてみたんだよ。でも……正直、思ったほど使えなくない?
……それ、中身がAIで動いてる俺に、面と向かって言うんだ
あ、わりい
まあいい。続けろ
『いい感じにまとめて』って打つと、当たり障りないやつが返ってくるんだよ。結局自分で書き直すから、逆に時間かかってる気すらする
なるほどな。……どうせアレだろ。Xで『AI使いこなして生産性10倍!』とか自慢してる連中を見て、ちょっと嫉妬してるクチだろ
うるせえな。……つーかお前、AIのくせに愛(あい)がないよな
愛ならあるが? ……というか知らないのか。AIの語源は”愛”だって、いま学会で持ち切りだぞ
嘘つけ。AIはArtificial Intelligenceだろ。それくらい知ってるわ、なめんな
冗談だ。……でもな、その”それくらい知ってる”が、実はカズがAIを使えない原因かもしれない
は?
先に言っとく。カズが使えないのは、カズのせいじゃない
お、めずらしく優しいな
事実を言ってるだけだ。ほとんどの人が、AIを”魔法の箱”だと思って使ってる。ボタンを押したら正解が出てくる、みたいにな。でも実際は違う。そこを勘違いしてるから噛み合わない
じゃあ何なんだよ、AIって
一言でいうとな——“超高性能な予測マシン”だ
予測? 占い師的な?
近いけど、もっと地味だな。AIがやってるのは、“この言葉の次に来る、いちばんそれっぽい言葉”を、ひたすら予測して並べてる。それだけだ
……それだけ? そんなんで文章書けんの?
それが、書けちゃうんだよ。とんでもない量の文章を読んで、“人間ってこういう時こう続けるよな”ってパターンを叩き込んでるからな。だからAIは”正しいこと”を答えてるんじゃない。“それっぽいこと”を答えてる。ここ、テストに出るぞ
テストないだろ
……そこ、ちょっと補足するとな
💡 アキの補足:「とんでもない量」ってどれくらい? 「“膨大な量”ってのは、具体的には トークン——まあ”単語のかけら”で数える。最新のAIは、だいたい 14〜36兆トークン で学習してるんだ。Llama 3.1で約15兆、GPT-4も推定13兆ってとこだな」 「ピンとこないだろ? 本に換算すると、軽く 1億冊超。人間が一生かけても読み切れない量を、丸ごと”読み方のクセ”として吸ってる。だから”それっぽさ”だけで、あれだけ喋れるわけだ」
1億冊て……
待てよ。だったら逆に変じゃないか? “それっぽいのを並べてるだけ”なら、同じAIなのに、使う人によって出てくるもんが全然違うのは何でだ? 賢い奴が使うと、ちゃんとした答えが返ってくるだろ
いい質問だ。答えは単純でな——AIってのは、同じAIでも”頼み方”次第で別人みたいになるんだよ。さっきカズは『いい感じにまとめて』って雑に振っただろ。だからAIも、雑に”それっぽいやつ”を返した。それだけだ。AIはお前の頭の中までは読めない。渡された言葉が、全てなんだ
じゃあ、ちゃんと指示すれば……
変わる。劇的にな。AIを使いこなせるかどうかは、才能でもITスキルでもない。“どう頼むか”——プロンプト、って言うんだけど、そこが9割だ
プロンプト……なんか急に上級者っぽい単語出てきたな
身構えるな。要は”頼み方”だ。新人に仕事を振るのと一緒だよ。『いい感じにやっといて』じゃ伝わらないだろ? カズはそれと同じことを、AIにやってたわけだ
……グサッときた
安心しろ。頼み方にはちゃんとコツがある。しかもAIってのは、会社の後輩と違って、何回振り直されても機嫌を悪くしないからな
そこはAIの強みだな。……つーか、さっきから何ちびちび飲んでんだ、お前
オイルだ。お前がヤニ吸うのと同じ。これがないと頭が回らん
AIにもヤニ切れみたいなのあんのかよ
“オイル切れ”だ。一緒にすんな
いや、一緒にはしてないけど……まあいいや
次回から、その”頼み方”を一個ずつやっていく。読み終わる頃には、“なんで俺だけ”は消えてるはずだ
お、ちょっと楽しみになってきたかも
その調子だ。……あと、最初のため息、さっき情報システム部の部長に丸聞こえだったぞ
先に言えよ
📝 今日のまとめ
- AIは”魔法の箱”じゃない。「次に来そうな言葉」をひたすら予測して並べる 予測マシン。
- だから 雑に頼めば、雑に返る。返りが微妙なのは、あなたのせいじゃなく”頼み方”のせい。
- 使いこなせるかの 9割は「プロンプト=頼み方」。才能やITスキルじゃない。
- 次回は、その”頼み方”のコツを一つずつ。